本日の講義は
「パーキンソン病(Parkinson disease:PD)」についてです。
パーキンソン病は神経性難病で、中脳にある黒質の神経細胞が著しく変性・脱落し、ドーパミンという神経伝達物質が減少(20%で発症)することによって起こります。神経細胞が変性する理由は現在では分かっていません。病状、障害は慢性的に進行する
慢性進行性疾患です。有病率は10万人に50~80人で、
発症年齢は50歳代が最も多く、男女差は見られません。症状として、
錐体外路症状が出現します。
パーキンソン病の症状は、4大症状として
振戦、
固縮、
無動、
立ち直り反応の低下がみられます。
振戦は
筋肉が収縮し手足が規則的にふるえる状態で、動作中よりも
安静時に出現しやすくなります。振戦は
精神的緊張や不安で増強し、歩行中も増強しやすくなっています。
固縮は、
関節を他動的に動かしたときに抵抗感がある状態で、頚部や四肢に出現しやすく、鉛菅様固縮や歯車様固縮を呈します。
筋緊張の異常は屈筋に優位に認められ、姿勢に関連してきます。
無動は、
動作が緩慢でひとつの動作の開始が遅れる状態です。
立ち直り反応の低下は、
転倒を防止する姿勢がとっさにとれなかったり、
姿勢を保つことが困難な状態です。
パーキンソン病のその他の症状として
異常姿勢(上半身が前かがみになり、肘や膝、足指などが屈曲すし、その状態で関節の変形、拘縮が起こる)
すくみ足(歩こうとしても足が前に出ない)
逆説動作(すくみ足状態でも目の前に目標物があると、急に足が出る)
小刻み歩行(歩幅が小さく、腕を振らずにゆっくりとすり足で歩く)
加速歩行(歩き出すととまろうと思ってもすぐに止まれなくなる)
前方突進(早足になり、前のめりで、すぐに止まれない)
仮面様顔貌(表情が乏しくなる)
言語障害(小声で単調な話し方)
自律神経障害(便秘、多汗、起立性低血圧)
書字障害(徐々に字が小さくつたなくなる)
精神症状(抑うつ傾向、自発性欠如)などがみられます。
パーキンソン病の症状には
日内変動があり、特に
午前中では動きが鈍くなります。
パーキンソン病の重症度分類として
Hoen-Yahr(ホーン・ヤール)の重症度分類があります。
Hoen-Yahrの重症度分類Ⅰ(StageⅠ)は、
身体の片側に振戦・固縮がみられ、
軽微な機能低下があります。
StageⅡは、
身体の両側に振戦・固縮・無動がみられ、
姿勢の変化がかなり明確になりますが、平衡障害はみられません。
StageⅢは、
姿勢反射障害の初期徴候(平衡障害)がみられるようになり、
歩行障害も出現してきます。
StageⅣは、
重症な機能障害(嚥下・呼吸障害)がみられ、
ADL(日常生活活動)に一部介助を要します。
StageⅤは、
寝たきりとなり、
全面的な介助が必要になります。
パーキンソン病の治療は、L-ドーパ、ドーパミン受容体刺激薬、抗コリン剤などの
抗パーキンソン薬による薬物療法が行われています。また、重症度に応じた目標を設定して、
運動能力、
ADL能力の低下を防止するリハビリテーションも行われます。他にも、手術療法として、
視床破壊術や
脳深部刺激療法というものが行われることもあります。しかし、
未だ根本的な治療法は見つかっていません。