本日の講義は物理療法の中の
「赤外線療法(infrared therapy)」についてです。
赤外線は電磁波の一種であり、赤外線が放射されるとその通路にある物体に吸収されて熱を発生します。これは、赤外線のもつ波長が物質を構成している分子の固有振動数とだいたい同程度の範囲にあるため、物質に赤外線があたると電磁的な共振が起こってそのエネルギーが無駄なく吸収されるためです。
このような
赤外線の輻射により生じる温熱効果を治療に応用しようとするものを赤外線療法といいます。
赤外線の作用は主に
温熱作用であり、その作用は局所的・全身的・反射的な特性を有します。他にも
皮膚血液循環量の増加や
新陳代謝促進、
鎮静作用、
消炎作用(亜急性・慢性)などがあります。
赤外線の
温熱効果は皮膚表面の浅層に限られるので、皮膚に選択的に温熱効果を与えることができます。つまり身体の深部は温熱効果が得られません。
また、長時間や広範囲の照射は
抹消部の血管を拡張させ血圧を低下させるので、失神・頭痛・めまいを起こしやすくなります。
広い面にわたって照射を行うと
発汗によって大量の水分が失われ脱水症となるので、照射前後に水分をとる必要があります。
赤外線療法の適応は、
腰痛、肩凝り、捻挫、筋違い、筋炎、筋痛、しもやけ、骨関節炎、変形性関節炎、リウマチ、関節炎、腱鞘炎、五十肩、結合組織炎、神経痛、神経炎、末梢性顔面神経麻痺、慢性皮膚疾患、慢性湿疹、強皮症、慢性中耳炎、慢性副鼻腔炎などがあります。
赤外線療法の禁忌には、
急性炎症、化膿性疾患、内出血の危険のある疾患、低血圧、悪性貧血などがあります。また、患者の患部に血行不全や皮膚知覚低下をきたしている場合も赤外線療法を行ってはいけません。